2018年のNHK FMバイロイト音楽祭の放送を聞いて2019年に向けての提言

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2018年12日15日のワルキューレの放送をもって、2018年のNHK FMのバイロイト音楽祭の放送が終了しました。

正確にはワルキューレの第三幕の放送が終わったのは12月16日でした。

放送最後には解説の方が学生の頃の昔話をされていました。

「学生の頃、年末のバイロイト音楽祭の放送では一音たりとも聞き逃すまいとしてじっと聞き入っていた」

「今でもどこかで放送に耳を傾けている若者がいるかもしれないと思うだけで胸が熱くなる」

とても良い話で、聞いているこちらの胸も熱くなりました。

それなのに同じ人や他の解説の方が、その大切な放送で自慢(?)話や中途半端な粗筋とか配役を延々と話されるのはちょっと…

と、愚痴っぽい話は止めにして、2019年に向けてアイデアをまとめてみました。

提言というほどのことも無いのですが、海外の放送局がやっていることを参考にしています。

NHK FMのバイロイト音楽祭の放送の課題

かつて金銭的な余裕もない一般の人がバイロイト音楽祭を楽しむことができる唯一の機会がNHK FMの年末の放送でした。

しかし現在はどうでしょうか?

DVDブックスもあれば、DVDやブルーレイで映像・音楽を楽しむことができます。

Youtubeなどの動画配信サイトにも掲載されていますし(違法が疑われるものも含めて)、NHKでも放送やオンデマンド配信されています。

音声(演奏)だけなら、それこそ低価格でCDを購入できますし、ネットに数えきれないほど掲載されています。

私たちはネット技術革新のおかげで、自由にメディアを選んでバイロイト音楽祭を楽しむことができるようになっています。

このことは、裏を返せばNHK FMのバイロイト音楽祭の放送は存在意義を問われていることにもなっています。

リスナーとして課題を指摘させていただければ2点!

放送音質が悪い

番組制作がリスナー視点でない

となります。

放送音質が悪い

この課題はNHKのせいではありません。

競合する他のメディアが進歩してしまったということです。

バイロイト音楽祭の公式配信であるバイエルン放送協会が、公式サイトでバイロイト音楽祭の実況放送をWebでストリーミング配信しています。

同じ音源と思われるものがNHK FMのバイロイト音楽祭の放送で使われていますが、聞いてみると無視できないほど音質に差があります。

これはFM放送電波にのせることからくる技術的な制限と考えられます。

だとしたら、バイエルン放送協会の高音質ストリーミング配信を聞けば良いだけのことです。

ラジオも要らず、スマートフォンやPCで容易に楽しむことができます。

NHK FM放送と同じ無料ですし。

何よりNHKに音源を提供しているところなので、そもそもこちらを聞くのが正しいのでしょうネ。

たしかに以前は「誰でもネットを使えるわけではない」という言い訳もできました。

現在では高齢者もスマートフォンを持つようになっていますし、テレビもネットに接続してブラウジングできます。

「オッケーグーグル、今年のバイロイト音楽祭を聞かせて」と声で指示できるデバイスまで出てきています。

ちなみに現在のネットの配信技術は進歩していて、光ファイバーでなくとも古くて安い低速のADSL(電話回線を使うもの)でも問題なく楽しめます。

番組制作がリスナー視点でない

あまり批判めいたことは言いたくはないのですが、もう少しリスナーを意識して放送していただければと思います。

放送時間について

2018年は放送開始が9時10分でした。(この10分というのも何かと思いますけど)

放送終了は各歌劇や楽劇の放送時間により違い、短いもので午後11時55分。長いもので翌日の午前2時5分でした。

リスナーの皆様は何かしらの手段で録音しておいて、後から時間のある時に聞くなどされていたかと思います。

中にはリアルタイムで楽しまれた人もいると思います。

年末のお楽しみイベントでもあるので、わざわざ時間を確保してコーヒーやお酒を味わいながらも良いですね。

そんな中でも、お好みの場面やフィナーレだけ聞きたいということはないでしょうか?

例えばですが、トリスタンとイゾルデは2018年12月12日(水) の午後9:10から午前1:30に放送されました。

ここで第二幕の愛の二重唱だけ聞きたいとか、とりあえずイゾルデの愛の死を聞きたいと思っても難しいです。

演奏以外の話が長い

演奏を聞きたくてラジオを聞くのですが、いつまでたっても第一幕が始まらないとイライラしたことがある人はいらっしゃいませんか?

ちなみに2018年のNHK FMのバイロイト音楽祭の放送について、NHKの番組表に掲載された時間から演奏以外(解説など)で使われた時間をみてみましょう。

歌劇「ローエングリン」

2018年12月10日(月) 午後9:10~午前1:00(230分)
「歌劇「ローエングリン」第1幕」(57分54秒)
「歌劇「ローエングリン」第2幕」(1時間21分10秒)
「歌劇「ローエングリン」第3幕」(1時間00分24秒)

230 – (57m54s + 81m10s + 60m24s) = 31m28s

演奏以外が31分28秒

舞台神聖祝祭劇「パルシファル」

2018年12月11日(火) 午後9:10~午前1:55(285分)
「舞台神聖祝祭劇「パルシファル」第1幕」(1時間45分22秒)
「舞台神聖祝祭劇「パルシファル」第2幕」(1時間09分47秒)
「舞台神聖祝祭劇「パルシファル」第3幕」(1時間17分48秒)

285 – (105m22s + 69m47s + 77m48s) = 32m03s

演奏以外が32分03秒

楽劇「トリスタンとイゾルデ」

2018年12月12日(水) 午後9:10~午前1:30(260分)
「楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕」(1時間17分05秒)
「楽劇「トリスタンとイゾルデ」第2幕」(1時間20分31秒)
「楽劇「トリスタンとイゾルデ」第3幕」(1時間15分45秒)

260 – (77m05s + 80m31s + 75m45s) = 26m39s

演奏以外が26分39秒

楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

2018年12月13日(木) 午後9:10~午前2:05(295分)
「楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕」(1時間22分22秒)
「楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第2幕」(59分58秒)
「楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第3幕」(2時間01分41秒)

295m – (82m22s + 59m58s + 121m41s) = 30m59s

演奏以外が30分59秒

歌劇「さまよえるオランダ人」

2018年12月14日(金) 午後9:10~午後11:55(165分)
(2時間10分21秒)

165m – 130m21s = 34m39s

演奏以外が34分39秒

楽劇「ワルキューレ」

2018年12月15日(土) 午後9:10~午前1:30(260分)
「楽劇「ワルキューレ」第1幕」(1時間06分52秒)
「楽劇「ワルキューレ」第2幕」(1時間31分35秒)
「楽劇「ワルキューレ」第3幕」(1時間09分59秒)

260m – (66m52s + 91m35s + 69m59) = 31m34s

演奏以外が31分34秒

もちろん解説者の話が聞きたい人もいるでしょう。

それでも多くのリスナーにとっては、演奏以外の時間が長すぎるとは思われませんでしょうか?

2019年に向けてのNHK FMのバイロイト音楽祭の放送アイデア

アイデアといいますか「他のメディアではこうされていますのでNHKもいかがでしょうか?」ということです。

放送音質が悪い

NHK FMのバイロイト音楽祭の放送と同時にNHKのサイト(「らじるらじるネットラジオ」など)でオリジナルのバイエルン放送協会提供の高音質データストリーミング配信をすれば良いと思います。

NHKのオンデマンド配信で有料配信するという手もあります(バイエルン放送協会との交渉が必要でしょうが)。

個人的にはNHKは公共放送なのでオンデマンドを全て無償にしていただくか、NHK受信料を無償にしていただきたいです。

私がNHK会長ならやるのですが。語学放送もテキスト含めて無償にします。だって税金と受信料で制作しているのですから。

番組制作がリスナー視点でない

放送時間について

リスナーの都合としては、午後11時とか、午前0時に演奏の最後の音が終わる(拍手が始まる)ように放送していただければもっと楽しみやすくなるのではないでしょうか?

要は好きなタイミングからフィナーレを聞くことが容易になるということです。

演奏以外の話が長い

解説などは別番組としてバイロイト音楽祭の放送とは切り離す。

粗筋、配役などは番組ホームページに掲載する(放送では話をしない)。

これだけで随分良くなります。

バイロイト音楽祭の放送内容は以下の構成でいかがでしょうか?

バイロイト音楽祭での各演目のファンファーレで番組開始

NHKの局アナが音源情報と収録日時だけ紹介する(60秒以内目標)

第一幕放送

ここで5分間のニュース

第二幕放送

ここで5分間の天気予報

第三幕放送

NHKの局アナが音源情報と収録日時だけ紹介する

別番組として切り離す解説等ですが、海外のサイトでは音楽評論家の批評や演奏者のインタビューなどが放送されています。

そこで日本のリスナー向けには以下のようなものを提案いたします。

【提案】2019年NHK FM放送「2019年バイロイト音楽祭」

司会進行(案)

NHKのアナウンサー

偉い先生とか音楽評論家とか芸能人を起用する必要はありません。

局アナで全然問題ありません。

むしろテレビの「ブラタモリ」などで証明されている様に、音楽とはあまり接点のない局アナの方が適しています。

個人的にはヒストリアでお馴染みのオジサンのアイドル井上あさひアナウンサーがおススメですが、それでは新人アナが育たないですね。

むしろ、クラシック放送経験ゼロの新人アナで良いかもしれません。

バイロイト音楽祭自体が良くも悪くも新しい演出を世に問うスタイルですし。

出演者(案)

音楽之友社「音楽の友」の編集部から1名

音楽之友社「レコード芸術」の編集部から1名

音楽学校から数名(公募)

リスナー代表から数名(公募)

ドイツバイエルン州知事(音声出演:日本語翻訳)

日本駐日独大使(音声出演)

ドイツ駐日大使(音声出演)

内容

初日はやはり特番でバイロイト音楽祭とは何かについてまとめていただきたいと思います。

ドイツバイエルン州知事、日本駐日独大使、ドイツ駐日大使のお三方にはバイロイト音楽祭について思いのたけを語っていただきます。(バイロイト音楽祭の意義と是非一度お越しくださいというメッセージです)

音楽之友社「音楽の友」の編集部の出演者にNHK FMでのバイロイト音楽祭の放送の意義についても語っていただきます。

各歌劇、楽劇の放送日での番組

音楽之友社「レコード芸術」の編集部の人に演目の歴史や演奏について語ってもらいます。

過去の名演とされるバイロイト音楽祭の録音

バイロイト音楽祭以外での名演奏

音楽之友社「音楽の友」の編集部の人に、2019年の演目の批評を語ってもらいます。

実際にバイロイト音楽祭で観てきた人のコメント(賛否両論)

海外の音楽関係者の批評とSNSなどに見るコメント(賛否両論)

放送後の番組

公募で集めた音楽学校からの若手の音楽家とリスナー代表によるディスカッションです。

ここが良かった、ここは悪かった、などフリーディスカッションしていただきます。

カールベームがかつてNHKのインタビューで語っていたように、音楽演奏では演奏に対して喧々諤々の議論が巻き起こるのが健全な姿なのです。

同じ演奏を聴いても涙を流すほど感動する人もいれば、ブーイングしたくなる人がいて当たり前なのです。

是非ここは日本の音楽界のためにも忌憚のない意見を交わしてほしいところです。

今時ですから、twitterなどのSNSを通じてリアルタイムにリスナーに参加いただくとベストです。

要は音楽に対する多種多様の受け止め方を楽しんでいただきたいのです(自分と相反する意見を排斥したり拒絶したりしないように)。

バイロイト音楽祭には現在でもナチスとユダヤ排斥の暗い過去が影を落としています。

ここは八百万神(やおよろずのかみ)を容認する日本人の特性を発揮する絶好の機会ではないでしょうか。

それと、誠に申し訳ないのですが立派な経歴の解説者の方はそれこそ黄昏なのです。

上から目線で「この歌手の歌唱は良かった」という類のコメントは、もはや時代にそぐわないのです。

著名人の方には申し訳ないのですが、音楽の良し悪しの判断は聴く人がすることなのです。

神々の黄昏の演出でも、最後の幕切れは燃え落ちるワルハラを新しい世代が見つめますよね。

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